「聖矢くんって、サッカースクールやってるんでしょ?」

ありがたいことに、よくそう言っていただきます。僕自身がサッカー選手なので、当然そう思われます。でも答えは「いいえ」。Advance Sports Academy(ASA)は、サッカースクールではありません。

今日は、僕がなぜサッカーを教える教室をつくらず、陸上×マルチスポーツという一見遠回りに見える道を選んだのか。その理由を、正直に書かせてください。

タイのスクールを見て、僕が気づいてしまったこと

タイに来てから、たくさんの子どもたち、たくさんのサッカースクールを見てきました。みんな本当にサッカーが好きで、ドリブルもうまい。技術だけ見れば、目を見張る子もたくさんいます。

でも、見ているうちに気づいてしまったんです。ほとんどのスクールや子どもたちに、ある共通の「抜け」がありました。

それは、スポーツをやる上で一番大切な基礎——身体の使い方と、見る力です。

うまくボールを蹴れても、自分の身体を思い通りに動かせない。スピードに乗れない、急に止まれない、相手や味方を「見て」判断する力が育っていない。これは、サッカーの練習だけをいくら積んでも、なかなか身につきません。土台が抜けたまま、その上に技術だけを積み上げている状態だったんです。

そこを変えたい。そう思ったときに行き着いたのが、走る・動く力をベースから鍛える陸上のプログラムと、いろんなスポーツから多様な身体の動きを引き出すマルチスポーツでした。だからASAは、サッカースクールではなく「すべてのスポーツの土台をつくる教室」なんです。

身体も小さく、弱かった僕の話

偉そうに語っていますが、実は僕自身、子どもの頃はまったく恵まれていませんでした。

小学校から中学まで——正直、今もですが(笑)——僕はチームの中で一番身体が小さくて、弱いほうでした。足の速さだって、下から数えたほうが早いくらい。スター選手とは程遠い子どもでした。

でも、ひとつだけ誰にも負けないものがありました。どの子よりも、たくさんのスポーツを経験してきたこと。サッカーだけじゃなく、いろんな競技で身体を動かしてきました。

そのおかげで身についたのが、「コツを掴む早さ」です。新しい動き、新しいスポーツに出会っても、人より早く「あ、こうやればいいのか」と掴める。これは、多くのスポーツを通して身体の使い方を覚えてきたからこそ手に入った武器でした。

小さくて弱かった僕が、最終的に日本人初の大卒タイリーガーになれた。その理由の根っこは、ここにあると本気で思っています。

ゴールデンエイジは「種を蒔く」時期

小学・中学年代、いわゆるゴールデンエイジにやるべきこと。それは、とにかく「種を蒔く」作業です。

スポーツにおける種まきとは、身体の使い方を覚えることだったり、いろいろなスポーツを経験することだったり。正直に言うと、サッカーや他の競技でプロを目指す子どもや親御さんにとっては、分かりづらくて、地味で、つまらなく見える練習ばかりです。

でも、それが何よりも大切なトレーニングなんです。

SNS映えする世の中で、見落とされる基礎

ところが今の世の中は、その逆を向いています。

スーパープレー、華やかなドリブル塾、SNSで映える派手な技術——本来はプロになってから磨くようなトレーニングばかりが目につきやすい。みんな、「花」を咲かせることにしか目が行っていない状態です。

そういう練習のほうが、子どもは楽しいし、親も見ていてワクワクする。コーチにとっても、そっちを教えるほうがずっと楽です。だから、世の中はどんどんそっちに流れていく。

気持ちは、すごく分かります。でも、急いで花を咲かせた先に何が起きるか。僕はそれをたくさん見てきました。

花を急いだ子は、なぜ消えるのか

小学年代で、木の根っこと幹を太く・長く育ててこなかった子。技術という花だけを急いで咲かせた子は、中学・高校・大学とレベルが上がるにつれて、すっと消えていきます。

理由はシンプルです。細い根っこと細い幹に、たくさんの花が咲いている。だからちょっとした風が吹くだけで、簡単に倒れてしまう。そして一度倒れると、修復が効かない。

これが、よく言われる「消えた天才」の正体です。才能がなかったわけじゃない。土台を育てる時間を、花を急ぐことに使ってしまっただけなんです。

ASAは、根っこと幹をとにかく太くする

だからASAがやっているのは、その根っこと幹をとにかく太くすること。

正直に言います。これは地味です。子どもたちが一番やりたがらないトレーニングです。しかも、結果がすぐには目に見えない。コツコツ毎日積み重ねて、ようやく少しずつ身についていくものだから、「成果が出ない」と感じて辞めてしまう子がほとんどなんです。

でも——一度身につけてしまえば、多少長い休みがあっても忘れません。これを「マッスルメモリー」と言います。

マッスルメモリーが身につくと、次にボールを使った専門的なスキルの成長が一気に速くなります。さっき話した、「コツを掴むのが早い子」になるわけです。

小学6年生くらいまでは、本当にゆるやかな成長で、周りの子にどんどん置いていかれる感覚に陥りがちです。親としても不安になると思います。でも、基礎を固めれば固めるほど、成長期のあとにグーンと一気に伸びます。

伸びるから、楽しい。楽しいから、ドリブルやシュートといった「やりたい練習」を自分から進んでやるようになる。そうして、きれいな満開の花が咲きます。すでに太い根っこと幹があるから、いくら花を咲かせても倒れない。どんなに辛い挫折や失敗を味わっても、戦い続けられる——そんな立派な人間に育っていきます。

僕がつくりたいのは、そういう場所です。

僕がタイで、子どもたちに伝えたいこと

最後に、少しだけ個人的な話を。

僕は日本でプロになることができませんでした。そんな僕に、キャリアをスタートさせるチャンスをくれたのが、タイという国です。日本人初の大卒タイリーガーとして戦わせてもらえたのは、タイがあったからこそ。

だから僕は、この恩をタイに返したい。ASAは、僕にとって単なる習い事の教室ではありません。タイへの恩返しであり、子どもたちにとっても、夢を追う若い選手にとっても、「模範」となれる場所にしたいと思っています。

地味で、時間のかかる道です。でも、根っこと幹を太くした子は、絶対に強い。それを証明するために、僕は今日も子どもたちと一緒に、地味な基礎をコツコツ積み重ねています。
次回は、この「コツを掴む早さ」がどこから来たのかを、もう少し詳しくお話しします。

根っこと幹は、体験の中でも見えてくる。

お子さんが今どんな身体の使い方をしているか、まずは一度、体験の中で見せてください。

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